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学校を離れ、ブナの里黒松内で“持続可能な農的暮らし”を研究する

学校を離れ、ブナの里黒松内で“持続可能な農的暮らし”を研究する

鶏の世話から始まる一日

「ブナ自然学舎」は生態系を大切にした自給自立の暮らしのあり方を学ぶ場。現在は家内と二人だが、志を同じくする人も加わってくれればと思っている。「ブナ自然学舎」の一日は平飼いしている70羽ほどの鶏の世話(餌・水やり、採卵、洗卵)から始まる。餌は自給園の籾米や黒松内産のもち米や糠などを与え、抗生物質等の薬は一切与えていないので、鮮やかな黄金色の卵黄で臭みのない美味しい、安全・安心な卵を毎日産んでくれている。また子どもの頃、飼っていた白色レグホン(白い卵を産む)は人には近づこうとしなかったが、このボリスブラウンという種はうるさいほど寄ってきて、ペットのように可愛い。

養鶏を始めて5年ほどになるが、きっかけは20年ほど前に本屋で見つけた「パーマカルチャー 農的暮らしの永久デザイン」(ビル・モリソン/レニー・ミア・スレイ著)という1冊の本である。その本に最初に紹介されていたのが鶏を中心にした農的暮らしのデザインで、以来、自足自給にあこがれていた私の指南書となっている。

永続可能な暮らしのデザインツールとしての「パーマカルチャ―」

「パーマカルチャ―」はパーマネント(持続的・永久の)、アグリカルチャー(農業)、カルチャー(文化)を合せた造語。1970年代、タスマニア大学で教鞭をとっていたビル・モリソンとデビット・ホルムグレンが確立した、人間にとって持続可能な環境をつくり出すためのライフスタイルのデザイン体系である。持続可能な文化は農業と倫理的な土地利用という基盤があって初めてつくりだすことができる。「パーマカルチャ―」が扱う範囲は、農業、林業、建築、エネルギー、さらにはコミュティづくりや教育等、私たちの生活全般をカバーしている。

「パーマカルチャ―」の3つの倫理と10の原則

[倫理1]地球に対する配慮
微生物、植物、動物といった生物、そして土、水、空気といった生命を支えるすべてに対して心を配る。
[倫理2]人間に対する配慮
人間が地球に与えるインパクトの大きさを自覚し、環境を保全しながら人間の基本的欲求を満たす。
[倫理3]余剰物の共有
自らの基本的欲求を満たしたら、次は他者が同じ目的を達成できるよう余り物や情報を差し延べる。

【10の原則】
01-つながりのよい配置、02-多機能性、03-重要機能のバックアップ、04-効率的なエネルギープランニング、05-生物資源の活用、06-エネルギー循環、07-小規模集約システム、08-自然遷移の加速、09-多様性、10-エッジ効果。

倫理や原則と言うと難しく感じるかもしれないが「パーマカルチャ―」は自然と自然、自然と人、人と人との「つながり」を大切にした永続可能な暮らしのデザインツールである。

無農薬、有機栽培を当たり前に

自給園では「パーマカルチャ―」の考えを生かし、完全無農薬(有機)でジャガイモやトマト、トウモロコシ、スイカ、メロン等、50種を超える多品種少量栽培に取り組んでいる。多くの品種を栽培することで気候不順や害虫・病気等によるリスクの低減につながっている。

また有機肥料は飼っている鶏糞や知人から分けていただいている牛の堆肥を使っているが、堆肥中の菌の力を借りることで害虫や病気の被害を防ぎ、質の良い作物が収穫できている。殺虫剤だけでなく除草剤も使わないので、雑草の管理は大変だが、ビニールマルチで覆ったり、小型耕運機での培土作業を適切な時期に行うことなどの工夫している。特に近年は雨の日が多く、水路を掘り、いかにして水はけをよくするかが課題である。またエゾシカやアライグマ等の食害も多くなってきており、電気柵等で被害防止に努めている。

「ビーチ・カフェ」でホンモノの味を楽しむ

また3年前に旧民家をリフォームして始めた「ビーチ・カフェ」(※ビーチは英語でブナの意)では、飼っている鶏の卵を使ったお菓子(スコーンやシフォンケーキ等)や卵を使った食事(卵かけごはんやタコライス等)をメニューにしている。特に食材にこだわり、我が家の自然卵の他、自給園で収穫したラズベリーやトマト等でジャムやソースを手作りして使っている。また、道産のバターや牛乳、小麦等を使い、よけいな添加物等は使用していないので、シンプルなホンモノの味を楽しんでいただけると思う。

多様な生き物が棲むフィールドに

「ブナ自然学舎」には山や川もあり、様々な植物や動物を観察することができる。四季折々に色々な花が咲く、ハーブガーデンにはチョウやハチ等の色々な昆虫が蜜や花粉を求めて飛んでくる。田んぼではカエルやトンボ等の生き物も見つけることができる。ラズベリーやブルーベリー、ブドウ、ウメ等の果樹も植えている。野良仕事の合間に食べる完熟したブドウやヤマボウシは最高である。これからも色々な種類の花や木を植えて、多様な生き物が棲むフィールドにしていきたいと思っている。

「ブナ自然学舎」のこれから

昭和40年ぐらいまでは、ほとんどの農家には馬がいて、ヤギや羊がいて、鶏がいた。堆肥を使う有機農業は当たり前で、自然と人のつながりや循環を実感することができた。しかし、ここ10年ぐらいで昆虫等がずいぶん少なくなっているように感じる。農薬を大量に散布し、化学肥料を使う農業が自然界の生き物に大きなダメージを与えているのではないかと危惧している。

「パーマカルチャ―」には3つの行動指針もあり、①自然そのものを観察し、②世界中の伝統的文化の知恵を学び、③現代の知識を融合させ、すべての人に適用可能なようにまとめられている。

これからも、自然との共生を大切にしていた日本の里山文化を学び直し、現代の科学的知識・技術を取り入れ、ブナ北限の里の風土に合った持続可能なライフスタイルのあり方を探っていきたい。

ハーブのあるガーデン
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