ないなら自分で作ればいい。最強の健康飲料がニセコで誕生するまで

ニセコで誕生した「HAKKO GINGER」(ハッコウジンジャー)というドリンクが、ヘルシーで美味しいと話題だという。
筆者は初めてきくドリンク名。発酵?ジンジャーエール?ビール? どんな飲み物なんだろう?
これが、噂の「HAKKO GINGER」!!
▼見た目もオシャレ!
いただきます!!!(ゴクリ)
!!!!!!!!
飲んだ瞬間、生姜のピリッとした刺激と、のどが熱くなるような感覚にびっくり!!
レモンの爽やかな香りと、糖蜜の優しい甘さ、生姜の辛さがクセになります。これは今まで体験したことのない味。もっと知りたい!
ということで、開発した前田伸一さんに取材させて頂きました。
前田伸一氏
デリシャスフロム北海道代表取締役。木ニセコ「杏ダイニング」 総料理長。北海道深川市出身。寿司職人の修行を積み、24歳の時にオーストラリアで日本食レストランを起業。ベストアジアンレストラン賞を受賞、1つ星及び2 つ星を獲得。2014年北海道へ戻り「杏ダイニング」を開業。12年間のオーストラリア生活中に出会ったジンジャービアを広めたいと開発を進め、2020年に日本初の自社製造「HAKKO GINGER」をニセコに完成。
HAKKO GINGERってなあに?
―まず、HAKKO GINGERはどういう飲み物ですか?
前田氏(以下、敬称略)「ジンジャービア」という、300年以上前にイギリスで誕生した、生姜を使った発酵健康飲料です。今もイギリスやオーストラリア、ニュージーランドなどで、ポピュラーに飲まれています。
―名前に「ビア」とついていますが、ビールではないんですね。
前田 はい、ノンアルコールです。ジンジャービアを真似て、後から作られたのが、みなさんお馴染みのジンジャエール。アメリカやカナダだとこちらが主流ですね。
― ジンジャーエールとは何が違うんですか?
前田 「発酵しているか」ですね。ジンジャーエールは炭酸水に生姜シロップを入れて作るのに対して、ジンジャービアは生姜、レモン、唐辛子を発酵させて作っています。あとは原材料。うちでは国産オーガニックにこだわっています。
〜HAKKO GINGER原材料〜
・生姜(北海道:自社農園と提携農家、高知:北上農園、刈谷農園)
・レモン(広島県三角島)
・唐辛子(ニセコLaLaLaファーム)
・蝦夷山桜酵母(北海道十勝)
・糖蜜(北海道ビート糖)
―すごい、ほぼ北海道産! 体にも良さそうですね。
前田 生姜のジンジャーオール、唐辛子のカプサイシンは血行を良くし、ビートから取れる「糖蜜」はアミノ酸やミネラルが豊富で、主成分のオリゴ糖により整腸作用も期待できます。
― いいことづくめ…!
前田 なので、最近は70代の間でも人気がフィーバーしています。お歳暮にも使ってもらっているんですが、「お歳暮のお代わり」現象が起きていて(笑)。口コミでも広まっていますね。
― (お歳暮のお代わりって初めて聞いた…!)
▼マスクの下で、ニヤリと笑顔の前田さん
前田 あとは、スキーヤーにも好評ですね。滑った後って、シュワっとしたのが飲みたくなる。ジンジャービアはスッキリした味わいなのに、あとから手足が温まってくるからスキーに最高だねって盛り上がっています。
―日本初の自社製造と聞きました。なぜ自社で作ろうと思ったんですか?
前田 最初から自分で作ろうと思ったわけではないんです。日本に帰国した時に、料理やカクテルに使いたくて、日本産のジンジャービアを探したんですがどこにもなくて。農家さんを回って作ってくださいとお願いしたのですが、実現せず。
―なぜ日本では作っているところがないのでしょうか?
前田 手間と時間がかかりますからね。材料や工程も多いので。あとは「ジンジャービアなんて誰も知らないのに、売れるの?」というのが一番多い声でした。だから、ないなら自分で作ろうと。
―誰も作っていないってことは、ゼロから手探り…!?
前田 オーストラリアにいた時に、ファーマーズマーケットで農家さんの自家製を見ていたので、基本の作り方は知っていました。でも開発にあたり、世界中のインスタやYouTubeを検索して、色々なレシピをリサーチしましたね。わからないことは直接DMで質問したり。だから、試作段階ですでにおいしかった(笑)。
―醸造所もご自身で作られたと聞きました!
前田 昔から趣味で、世界各地の酒蔵や加工場、大学の研究所などを巡っていたので、実際に醸造所をやるなら大体どれくらいの規模で作るか、イメージはありました。世界のどこを探しても、このスタイルは僕だけだと思います。
オリジナル醸造所の秘密とは?
―醸造所にはどんな特徴がありますか?
前田 10ℓタンクを使っていること。普通、クラフトビールやワインなどは最低でも350〜500ℓタンクを使うのが主流なんです。でもタンクを洗えるだけの巨大な洗浄機が必要だったりと、その分設備投資も大変。だからミニマムにできる方法を考えました。
▼10ℓタンクが、コンパクトにずらりと並んでいる
前田 規模が大きくなるほど、人員も必要になります。でもこのスタイルなら極端な話、一人で年間10万本を作れる仕組みです。来年は増築して、年間30万本を目指しています。
―10万本!!!!
▼試作段階を含めて、様々な種類がずらりと並ぶ
前田 オリジナル以外にもストロベリー、ハスカップ、アップル、ナイアガラなど、色々な種類があります。フルーツは単体で食べるなら、実の部分が美味しいですよね。でも、種や皮にしか含まれていない旨みや香り、栄養素があります。それを果汁に移すんです。果物だけで1週間ほど、低温発酵させることで、その果物のポテンシャルを最大限に引き出すことができます。
前田 まずはこの事業がしっかりまわって、北海道ならではのものを表現していけたらと。飲み物として高いと思われますが、原材料にこだわり、ビールやシャンパンにも置き換えられて、健康にいいものを気軽に飲めます。
一方で、低価格実現のため、ソフトドリンク業では香料と着色料ばかりの飲み物が目立ちます。僕はその常識をぶっ壊したい。少し高くても、健康的で天然の味わいを追求したソフトドリンクがあったっていい。
(熱いです…!!)
―最後に、今後の動きなどを教えてください。
前田 コロナの状況下ですが、現在約100店舗で取り扱いがあります。2022年から本格的に輸出するので、今はその準備中です。すでに単発でシンガポールやマレーシアには輸出をしています。また、昨年から倶知安町と仁木町で、ふるさと納税の返礼品になったので今年は10市町村くらいで増やしたいですね。
あと最近は、発酵の技術をもとに、焼き菓子部門もスタートしています。
▼すべてグルテンフリー、中には乳製品不使用や、完全なヴィーガンの焼き菓子もあるそうで、体に負担が少なく、アレルギーの方も安心して食べられるのが嬉しい。
前田 どんなに健康にいいことでも、続かなくては意味がない。だから、HAKKO GINGERや焼き菓子などを通して、「楽しく続けられて健康になる」ものを届けていきたいですね。
日本発の自社製発酵ジンジャーの誕生には、前田さんの熱い情熱とヒストリーがありました。ありがとうございました!
(取材:大川美帆)
HAKKO GINGER公式ページ:hakkoginger.theshop.jp/about